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見慣れた部屋。…ヒカルの部屋。
「適当に座れよ」
ジュースを持ってきたヒカルが、頭の後で言った。
ベットの脇に座ると、私は何となくすぐ横に置いてあったクッションを抱きしめた。
「はい」と置かれたジュースを「ありがと」と言ってから口に運ぶと、ふと目に入る部屋の真ん中に置かれた碁盤。
いくつか置かれたままの碁石とふたが開けっ放しの碁笥。
“ヒカルらしい”と、思わず笑みがこぼれた。
「昨日打ってたの?」
碁盤の方へ行ってみる。
「ああ」とヒカルは返事をして盤の上の石を碁笥に戻した。
「打つんだろ?」
そのまま私を見上げた。


「うーん、完敗」
プロのヒカルと唯の女子高生の私。勝てるわけはないってわかってるけど、やっぱり完敗。
「ね、ね、ヒカル!私、前より上達してる?」
「ま、前よりは…な」
少し含みを持った意地悪な口調。“どーせ、私は下手ですよ!”心の中でふくれてみてもヒカルには届くはずない。
「…そんなふくれんなよ」
「え……」
ちょっと困った様な優しい笑顔が私に向けられた。
ヒカルの手がそっと頬に触れる。2人の間には小さな碁盤が一つ。
思いがけない急接近。…嘘、少し期待してた。


寄り添った身体、指先まで心臓みたいにドキドキしてる。触れる唇、もう何回触れたかわからないのに、震えがヒカルに伝わってしまいそう。
落とした視線をヒカルに向けると、それが重なった。伏せる事は出来ず、呼吸をしているかどうかもわからない空間に私の心音だけが響いている様だった。
“恥ずかしい”何度繰り返されても消えない思い。
“愛しい”繰り返されるたびに増えていく私の欲望。
静かな部屋に私とヒカルだけ。2人の息づかいが混ざり合い耳に届く。 いつの間にか子供でなくなったヒカルを感じる大きな背中に腕を回し、唯しがみつく私を通る痛み。口を動かしヒカルを呼ぶと、答えるように伝わる力……


甘い微睡みから目を開けると、そこはヒカルの部屋、ヒカルのベッドの上。
瞬きをし、左右を見るとヒカルがこっちを見ていた。
一糸まとわぬ2人の身体は一枚の布団がかかっているだけ。思わず気恥ずかしさに赤くなる顔を伏せていると、ヒカルは起きあがり床に散らばった服を着始めた。
「ほら」
ヒカルが飲みかけのジュースを差し出す。
顔を上げ受け取り、口に運んだ。少しぬるくなった甘味が喉を潤す。
飲み終わったコップを手を伸ばして床に置いた   刹那、手を滑らせ肩に掛かった布団ごと床へ滑り落ちた。
「大丈夫か?」
近寄るヒカルを視界の端に感じながら、苦笑混じりに身体を起こすと肩の重みが一気に消えた。
私の身体を唯一包んでいた布団が私の身体を離れたのだ。
目の前にはヒカル…声が出なかった。むしろ、思考が止まってしまっていた。
ヒカルは私の身体に腕をまわし、後に落ちた布団を再び私の身体に巻いた。
やっと動き出した思考で、私はヒカルに「ありがとう」と伝えた。
抱きしめられて居るようなまま、2人の距離が縮み、そっと優しいキスが唇に落とされた。


鼓動がはしゃぐのも、心が安らぐのも、嬉しいのも、全てはあなたの傍……


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ずいぶん昔に書いたものを発掘したので、UPしました。
一応R指定です。いや、性行為という物が出てくるだけですけど。苦笑
もうとっくに付き合っててHするのも何回目かわかんない設定。初ではないです。
タイトルは確か形容詞か何か。名詞でない事は確かです。「倒れる」だか何かだった記憶が。。。昔の事過ぎて覚えてません。汗
個人的萌えポイントはやっぱり布団が肩から落ちたところ。いつか漫画に書き直したく思います。希望

(2006.6.16up)