無題

泣かしたこともある 冷たくしてもなお 寄りそう気持ちがあればいいのさ

あなたがもしもどこかの遠くに行き失せても 今までいてくれたことを忘れずにいたいと


「おはよー」
「おはよー…あれ、進藤久しぶりじゃんっ」
久しぶり、と言っても今回はたった3日でしかないヒカルの連続欠席日数。
それでも碁関係でクラスの誰よりも欠席していた。
友達との会話をまずは適当に流して机に荷物を置き、それから友達とも会話をやり直す。
授業も休み時間中もいつもと何ら変わらず過ぎていき放課後になり、クラスの大体は部活へ行き今日教室の中で仲の良いグループができはじめる。
「金子、今日は囲碁部?」
ヒカルは同じクラスで囲碁部の金子に囲碁部のことを聞いた。
「ええ。そうだ、進藤今日部活終わってからこっそり三谷と打ってやってよ」
「ん?ああいいけど、何で終わってからなんだ?」
「定時まではあたしの相手してもらわなきゃ。今日こそ倒すわよ」
金子はフンッと気合いを入れた。
金子の突然の申し出もヒカルにとって友達と碁を打って遊ぶ久しぶりの機会に気持ち的には大歓迎だった。
「じゃぁね」
「ああ、がんばれよ」
とても金子が三谷にかなうか、と思いつつも、そこは触らぬ神に祟りなし、というやつだった。
まぁヒカルに三谷の相手を頼む辺りから言えば、金子は自分が勝負になっていないと悟っているのだろうが、そこを口にして良いか悪いかは金子のプライドが物を言う。
金子さんは恐い。(正しくは怖い)
―ガラッ
金子は荷物を持って教室を出ていった。
「…囲碁部っていえばさー髪の長ーい子いるじゃん」
「あー、藤崎だろ?可愛いよな」
ヒカルのクラスの男子達が、金子が居なくなったと同時に囲碁部の――――あかりの話を始めた。
「は?何言ってんだよ、あかりがァ?」
そんな友達をヒカルは鼻で笑う。
「なんだよ、可愛いじゃんかよ、藤崎」
「三谷がうらやましいよなー」
男子達はヒカルの言葉を不服そうに返す。
そして三谷をうらやんだ。
“なぜ三谷か?”ヒカルの中にそんな疑問を浮かばせる。
「…三谷?」
「そー三谷。同じ囲碁部で仲良いしさー」
「藤崎もすっげー熱心に部活に誘ってるし」
「うらやましいよー」と男子達は口々に言った。

ヒカルとあかりは幼なじみで仲も良くて。
あかりが囲碁部に入ったのだってヒカルが居るからだと思っていた。
けれどヒカルがやめた囲碁部に残っているし、囲碁を好きになったみたいだった。
囲碁部の仲間…特に古株同志の三谷ともとても仲良くて。
今までもあかりを可愛いと思う人はいただろう。
でもあたりがヒカル以外の特定の男子と特に仲が良いとか聞いた事なんてない。
あかりはいつもヒカルの後をついてきていて…。

「…どうした進藤?筋が悪いし…上の空っ」
―パチッ
三谷はそう言いながら、ボロボロの碁盤に黒い碁石を打った。
教室で友達の話も聞かずにあかりの事を考えていると、あっという間に文化部の活動時刻を告げるチャイムが鳴り、ヒカルは囲碁部室の代わりの化学室にきた。
そして三谷と碁を打っていた。
「別に…」
―パチッ
「…ふーん?」
―パチッ
2人が打つ度にあかりが几帳面にノートをつけていた。
「…あかり、何ソレ?」
「え?これ?」
あかりは手を止めてヒカルに聞き返す。
あかりの方を見もせずにこくりとうなずくヒカルに、あかりは得意満面に笑った。
ヒカルに褒めて欲しかった。
「三谷君用囲碁部員対局ノート!」
―パチッ
今日一番の悪手だ。
「…進藤、ナメてんのかよ」
簡単につくはずの一局が接戦だった。

一夜過ぎた翌日。
ヒカルは今日も登校していた。
一限の英語の授業で当たる事になっているのを思い出したヒカルはあかりにノートを借りに行く事にした。
「あかり、いる?」
ヒカルはあかりのクラスに来るとあかりを探した。
「あ!ヒカル〜、何なにー?」
ヒカルに呼ばれて、あかりは嬉しそうに教室から出てきて笑いかけた。
「英語のノート貸してくんない?」
「いいよ!ちょっと待ってね」
そう言うと、あかりはきすびを返して教室に戻っていく。
そしてすぐに戻ってきてヒカルにノートを渡す。
「はいっ!!」
「…ん。じゃ終わったら返しにくるな、サンキュ」
2人は笑顔で向きあった。
そしてその時、
「藤崎、国語辞書貸してくれねぇ?」
ヒカルの背後から聞き慣れた声がした。
「あ、三谷君おはよう」
「三谷…」
「…」
三谷はヒカルと目を合わせようとしなかった。
そんな空気を読んだのか、少し気まずそうに「辞書もってくるね」とあかりは再び教室に戻った。
「三谷…昨日は…」
あかりが居なくなり、ヒカルは三谷に話しかけた。
「…っと、その…悪気は…」
「…今日…」
ヒカルがしどろもどろに三谷に話しかけていたのを遮って、三谷はその重くなった口を開いた。」
「再戦しようぜ、一局でいいから…」
そう言った三谷は少しだけヒカルを睨んだ。
「…いいぜ」
「…はい、三谷君」
返事をした直後、あかりが廊下に出て三谷に辞書を渡した。
「さんきゅ。あ、あと今日も進藤と打つから化学室頼むな」
「ええー!ヒカル今日も来てくれるの?やったー」

OKの返事を出したものの、ヒカルの心はまだココに無い。
三谷があかりの所へ辞書を借りに来たり。
確かに仲は良さそうに見えるし、実際良いからしかたない。
でもまだヒカルとあかりの方が仲が良いのではないか?
そんな気が少しする。
いつからあかりとのウワサの相手が三谷になったんだろう。

ヒカルは教室に帰って英語の授業を受けた。
思い出した通り当てられたがあかりのノートに助けてもらえた。
「進藤すげーな。授業飛び飛びなのに」
休み時間友達がヒカルの英語の授業で当てられた事をほめ、ヒカルの机をのぞき込んだ。
「ノートもマメだなぁ…藤崎のノート?」
「え、…あ。ああ」
友達はノートを手に取ってパラパラとめくりながら、当然の事の確認のように言った。
「愛されてるよなぁ、進藤って」
今度はノートとヒカルの顔を交互に見合わせて友達は笑った。
「…はぁ!?…何言ってんだよ、あかりはただの――――」
「はいはいー。どーせくっついてねーってだけじゃんか」
「なぁ」
言葉は呆れていても声は慌て顔を真っ赤にしたヒカルに、友達は冷静に突っ込んだ。
その友達の声には少しグチっぽい表現も含まれていて、近くに居て話を聞いていた友達が相づちをうって話に加わってくる。
そしてヒカルは2人がかりで責められる形になった。
「違っ全然そんなんじゃねぇって!」
「どーだか」
1人の友達は、まだヒカルを責める方向でいたが、もう1人の友達がヒカルにとって思いがけない事を言った。
「ま、進藤と藤崎なんて今更かまったってな」
「…三谷がいるんだろ?」
ヒカルはワンテンポ遅れて、不機嫌そうに返した。
「ぶぁっはっはっ」
「ぷ…くくっあはははっ」
すると友達は吹き出して、ひとしきり笑った後にヒカルに言った。
「ちっがうよ、進藤と藤崎の話なんて公認、当たり前ってこと!」
「今更、今更――っ」
「でも…昨日…」
ヒカルは昨日の放課後、あかりと三谷の話をしていた友達の方を見る。
その視線を追って確認した友達は、ますます面白そうな顔をした。
「あいつら、藤崎の事好きで進藤にそう言ったんだぜ、きっと」
「あ、あるある!」

つまり。
ヒカルとあかりの仲なんてもう付き合っているであろう事が公認のウワサで、今更そんな話してもしょうがないし、2人が一緒なのはもう当たり前。
それが悔しいから最近仲がいい三谷を出してきて、ヒカルを不快にさせたかった奴がいる、と。
―ガタンッ
「勝手なこと言ってんじゃねー!!」
数秒後、全てを理解したヒカルは勢い良く立ち上がり友達を怒鳴ったが、それはさらに彼らを笑わせ、ヒカルをからかうネタにしたいだけで終わった。

三谷との囲碁も終わり、学校を出た。
あかりと2人で並んで下校するのはいつもの事だった。
「やっぱりヒカルは強いね!」
あかりが明るく話し掛けてくるのもいつもの事。
「ん?まぁな」
「昨日は調子が悪かったの?悩み事?」
「うるせー」
少し笑ってそう言ったヒカルの声は、暖かくて、あかりの中で少し大人びて響いた。
「…今、ヒカルの声、男の子って感じに聞こえた…」
その声を聞いたあかりは、少し笑って感想を言ってみる。
「…はぁ?何言ってんだよ」
「わたしのこと、本気で殴らなくなったし…」
「いくつの時の話してんだ…?」
ヒカルに呆れられて、あかりは少しうつむいて小声で言った。
今ならきっとまだ、ヒカルには解らないから…
「だから…昔よりわたしを泣かしてくけどね…」
それは本当に消え入りそうな声。
「え?何?」
やっぱりヒカルには聞こえなかった。
「なんでもな―――いっ」
あかりは少し頬を染めて楽しいそうに笑う。
「…ったく。」
呆れて出したはずのヒカルの声がつられて楽しくなっていた。
そして何事も無かったかのように続く会話
「今度、またおれん家で碁、打つか?」
「うんっ!!」
続く楽しみ

2人にとっていつもの当たり前が、今日のヒカルにはくすぐったく感じた。


Cloud.Water開設おめでとう深羽vv
HP開設祝いにどーぞ♪プレゼント!!下書きルーズリーフそのまんま手渡します。
ヒカ♥あか小説で祝います。

いつもステキなイラストをいっぱい描いてくれて、大体のリクOKして、私にいっぱいのイラストをくれる深羽にお礼です。
でもね、ちょっと思ってたより長いの書きたくなったら短いのが浮かばなくて。
めちゃ文章気に入らないし文才ないけど。
私がヒカル♥あかりを好きな気持ちと深羽へのお祝いの気持ちが少しでも伝わってるといいな。
ま、その気持ちが私の心をしめる割合も少ないから少ししか伝わらないだろうけど。(おい)←ウソです。

HPがんばってね。
                  Moka.W


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ありがとう桃夏v少ない気持ちを自分の中で増幅して感じてます(笑)
桃夏にリクエスト(構図描いて)もらうと自分で全部描くより出来がいい気がするんだよね。なんでだろ?
桃夏の構図っていっつもあたしの好みだからかなぁ?好みなのに自分じゃ思いつかないの;
あなたの書く小説って可愛くて深羽好みであたし大好きなのですよv
だからお祝い小説貰えてスッゴク嬉しいよ☆ありがとう!!
上の桃夏の後書き、ルーズリーフ見ながら自分で打ち込んだから何だかとってもテレでしたょ。

(2004.12.1up)