喧嘩・・・というほどの物ではなかった。
いつものデートのドタキャン。
それに「分かった」と言えなかっただけのこと。
でも、私にだって言い分がある。
(こんなにいいお天気なのよ)
夏に似合う、快晴の空。
(チケットだってもう使えなくなっちゃう)
楽しみにして買った、人気の映画の前売り券。
一日、また一日と出かけるチャンスを失って、もう有効期限が迫っている。
私は『普通』でいいの。
朝、時間通りの待ち合わせをして、お昼は楽しくランチ。
お買い物に、時には少し電車で遠出。
日が落ちて暗くなるまでは、ずっとずっと一緒にいたい。
――――――簡単なようで、私達には何だか難しい課題のようで・・・。
(バカ・・・)
お気に入りの洋服。
少し結んだ髪。
お肌の手入れも、いつもより念入りにして。
(それは全部、新一のためなのに)
何だか切ないため息が、無意識にこぼれ落ちる。
「ここ、座ってもいいか?」
刹那、かけられた声。
それは少し息の上がった、苦しそうなもの。
でもすぐに分かった。
大好きな新一の声だということが・・・。
初めは、謝ったって許してあげないと心に誓っていた。
だけどいざ彼の姿が目の前にあると、そちらを向きたくなるのは自然の摂理。
(走って来てくれたんだ・・・)
少しだけ我が儘を言った私を追いかけるために。
何故だか、それだけのことでも嬉しくなるのは、惚れた弱みという奴なのかもしれない。
「いいよ・・・」
新一には内緒だけど、私の横に空けたベンチの空間は、意図的だったの。
あなたはいつも、私の左側を居場所とするでしょ?
だから、問われなくても本当は、ここは新一だけの特等席なのだから――――――
write by 渚良 信 様
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新蘭夏祭り05に特典イラストとして参加させて頂いた時の絵です。
ポップチック。けして、けして、手抜きでは(汗)
お題は「ここ、座っていい?」です。
主催の渚良さんのお書きになった小説が私の絵に合わせて書いて下さったって事が嬉しくて嬉しくてvv
ご了承頂いたので載せさせて頂きました。私の絵を見ずに小説を堪能して下さいv(2006.2.10up) |